葬儀の背景にあるものは 現在と過去の葬儀に関する文化を考える

昔とは違い、死は人生という一括りの中で突然訪れることは少なくなった

人生100年時代という言葉が唱えられるようになった現代。傷病などで若くして亡くなる方の割合は時代を経るにつれて少しずつ減少してきています。多くの方が80歳以上まで生きることも意識している現在、老後の不安や介護の問題など、引退したあとの健康や金銭的な問題を考えなければならないというのが現在の日本の様相です。
誕生から学生時代、社会人、子育て世代、引退、老後、死という流れがひとつの当たり前のものとなっており、人生がひとつのパッケージ化されたものになっています。

葬儀というものが変化してきた理由は情報の流通の変化

人生というひとつのレールの中で葬儀というものも、ひとつのパッケージとして考えられています。葬儀というものが故人に対して送る、死というひとつの区切りを付ける儀式であると考えられないようになってきました。葬儀の現在の役割は故人とのお別れ会であり、お通夜や告別式が中心となっています。
かつての葬儀というものは故人を無事にあの世に送り出すのが役目でした。その承認をする葬儀が中心であり、お通夜や告別式はそれに付随するものに過ぎなかったのです。
こうした変化が起こったのは1970年代のことです。葬儀というものが地域から切り離され葬儀業者によって執り行われるようになると次々に新しい慣習が誕生して行ったのです。それまでの葬儀とは異なるものが多く発生し、それによって葬儀に対する考えも変わってきました。それまでは葬儀の様式などは地域で伝えられており、その地域によって独自のものがありましたが、現在ではインターネットの情報やマニュアル本などによって伝えられているものが主流になっています。そのため、地域独特の葬儀の風習というのはどんどんと失われていっているのです。

現在と過去の葬儀の様式の変化

お通夜や告別式が中心になると、それを行う場所が必要になりました。かつてのお通夜や告別式の風景というのは、参列者は次々に会場に来て焼香を行い帰っていくという流れ作業のような形でした。しかし、最近では家族葬などが中心になったこともあり、全員を同時に収容し続けることができる会場が必要とされています。
そうした流れからも葬儀専用の式場が一般的に利用されるようになり、現在では葬儀全体の80パーセントほどが式場で行われるようになってきています。

公営斎場が増えている理由は

葬儀式場が社会として必要不可欠なものとなってくると行政としてもそれに対応をし始めました。また、中にはお通夜や告別式などを行わず直葬などの葬儀の形も出てきました。
現在では自治体などが作った公営の斎場も多くあります。葬儀を行うのに個人個人が自分の都合にあった式場を選択すれば良いという時代になったのです。
これまでの流れも踏まえてこれからも公営斎場は増えていくでしょう。