火葬場の減少、葬儀式場の増加

火葬場としての役割を果たす斎場

一般的に斎場と言えば火葬施設のことを指します。現在では火葬場に併設されて葬儀式場があることも多いため葬儀式場のことを指して斎場ということもあります。
火葬を行うための施設は公営の斎場、葬儀を行うための斎場は民営の斎場というイメージがあるため、混同する方が非常に多いのですが、実はこうした勘違いが発生しているのには理由があります。
火葬を行うための施設である斎場にも、葬儀を行うための式場である斎場にも、公営のもの民営のものの両方があります。しかし現在のように火葬を行う場所は公営、葬儀を行う場所は民営というイメージができている原因はその成り立ちによります。

そもそも火葬施設が作られたのはいつのことか

火葬施設は主に江戸期から明治時代にかけて作られ始めました。都市部を中心に火葬の需要が高まり、火葬施設が作られるようになったのです。初期の火葬施設というのは現在のような建物ではなく、寺院や入会地などに作られた焼き場でした。それが技術が進歩するにつれて少しずつ現在のような火葬を行う建物が建設されていったのです。
公的な火葬場が作られた場合もありますが、初期の火葬施設というのはその多くが民間のものでした。しかし、時代を経て遺体を処理する場所は公的な組織が管理した方が良い、という考えが広まり少しずつ公営の斎場に統廃合されていきました。
たとえば、埼玉県の場合、21ある火葬可能な斎場のうち20が公営斎場です。

葬儀を行う場所がウチからソトへ

一方、葬儀式場である斎場はその多くが民営のものです。もともと葬儀を行う場所というのは自宅もしくは寺社などの宗教施設が一般的な場所でした。しかし、住宅様式や生活スタイルなどが変化して行くにつれて、そうした場所で葬儀をする機会というのは減っていったのです。
葬儀を行うのは自宅や寺社ではなく、葬儀専門の式場でという考えが葬儀会社の営業によって広がり、一般的になっていったのです。1980年頃に広がり始めた民営の葬儀式場はそれから2世代ほどをかけて葬儀を行う場所の大部分を占めるようになったのです。現在では葬儀全体の80パーセントほどが葬儀専門の式場で行われており、自宅や宗教施設などで葬儀を行う人の方が少数派になっているのです。

葬儀と火葬がセットで考えられるようになってきている

現在では公営の葬儀式場も少しずつですが建設されています。と言っても、葬儀式場が単独であるわけではなく、公営の火葬施設に式場が併設されるようになってきているのです。ほとんどの人が葬儀式場で葬儀を行っている現在、葬儀式場というものが社会的に当たり前のサービスとして考えられているのです。そのため、大きな自治体や複数の自治体でおくやみに関する業務を共同で管理運営している場合、葬儀を行う式場が火葬施設に併設されて建設されているのです。